保険代理業(保険代理店)の収益構造(収益モデル)を分析するための視点について書いています。
収益構造
保険代理業の収入は、主に保険会社から受け取る手数料収入です。
ただし、手数料収入の元となるのは、保険代理店を通じて契約した顧客の保険料です。
手数料収入を得るまでの流れは、次の通りです。
- 顧客が保険代理店を通じて、保険契約をする。
- 顧客が保険会社に保険料を支払う。
- 保険会社が保険代理店に手数料を支払う。
単純に言えば、保険代理店は保険契約を獲得すればするほど、手数料収入を増やすことができます。
また、保険契約が継続している間は、手数料収入を継続的に得ることができるため、ストック型のビジネスといえます。
手数料収入の構造を式で表すと、次の通りです。
- 手数料収入=保険料×手数料率×ポイント率
保険料
保険料を因数分解すると、次の通りです。
- 保険料=保有契約件数×保険単価
保険代理業を分析するためには、保険料を増やすためにどのような施策をとっているか見る必要があります。
具体的には、次の通りです。
- 保有契約件数を増加させる施策(集客、営業方法、新規顧客の囲い込み、取扱商品の多さ)
- 保有契約件数を維持する施策(解約防止対策、アフターフォロー)
- 保険単価を上げる施策(取扱商品、ターゲット顧客)
なお、生命保険の場合は契約から一定の年数が経過すると、手数料収入を受け取ることができなくなります。つまり、手数料収入を維持するためには、新規顧客を見つけてくるか、既存顧客に保険の切り替え(再契約)をさせる必要があります。
損害保険の場合は、1年契約の場合が多いため、他の代理店に乗り換えない限りは、継続して手数料収入を得ることができます。つまり、他社に乗り換えないための顧客の囲い込みが重要となります。
手数料率
保険会社との契約で決まりますが、一般的に次の率といわれています。
- 生命保険:5〜7%
- 損害保険:15~20%
また、貯蓄性の高い保険では高く、掛け捨て型の保険では低い傾向にあります。
ポイント率
保険代理店ポイント制とは、保険代理店が保険会社に貢献した度合いを数値化して評価する制度です。
主に損害保険で採用されている制度です。
例えば、ある保険代理店が60ポイントと評価された場合、手数料収入は次の通り計算されます。
- 手数料収入=保険料×手数料率×60%
つまり、本来もらえる手数料収入の60%しかもらえないことになります。
ポイントは、主に次の2つで評価されます。
- 前年からの増収率
- 年間収入保険料(年間収保)
この評価方法では、規模が大きい代理店ほど有利となり、中小零細の代理店は不利となります。
実際に、保険会社の側は中小零細の代理店を排除する狙いがある、といわれています。
これから、損害保険の代理店として独立して起業しよう、という人は気を付ける必要がありそうです。
また、次の項目でも評価される場合があります。
- 損害率の低さ
- 複数種目割合の高さ(複数種目割合とは、1人で複数の種類の保険に加入している人の割合。例えば、火災保険と自動車保険に加入している人の割合)
- 顧客対応等の業務品質(ただし、ポイントアップに貢献する度合いは低い)
参考ページ
金融庁:業界団体との意見交換会において金融庁が提起した主な論点:日本損害保険協会(平成29年9月21日)